機動戦士ZガンダムIII-星の鼓動は愛-

先週、新宿でZガンダムを見てきたのでその感想。以下、ネタバレ含むので折りたたみ。

  • まず俺のガンダム属性から書くと、ガンダムはファーストから逆シャアまでしか見ていない。さらに、OVAは見ていない。ファーストを見たのはガンプラブームが起こる前後だが、Z以降を見たのは20歳ごろ。で、Zが一番好き。ZとZZはスニーカー文庫版も買って読んだ。年齢的にはもろにZ世代だがリアルタイムでは見ていなくて後追いで見てZ好きという微妙なポジション。中学の頃にSDガンダムのカードダスをちょうどZからZZの時期に集めていて、そのときにキュベレイのカッコよさに(SDだけど)惹かれていたという刷り込みも影響しているかもしれない。
  • Zの好きなところは後半の勢力入り乱れるところと、「まだだ、まだ終わらんよ」等の各種名セリフ。ガノタ文脈でよく言われる、病んでるような暗さなどについては特に意識していなかった。というかそんなに暗いと思わなかったし、人がバタバタ死ぬことについても特別どうと思っていなかった。感受性の麻痺したゲーム世代!というか、三国志的な戦記物として受容していた部分が大きかったためだと思う。
  • あと、ガノタ文脈でよく言われるクワトロがヘタレっていうのも全く感じなかった。クワトロがヘタレなら諸葛亮もヘタレだ、俺の中では。
  • 映画版だが、実は最初の二つは見ていない。見ようと思っていたけど見逃していた。俺自身が映画をほとんど見に行かないというのもあるが、見なくてもまあいいや程度にしか思っていなかったということなんだろう。ちなみに俺が映画が苦手なのは、幼少の頃映画を見に行くたびに気持ち悪くなって途中で外に出たり、トイレで吐いたりしていた経験が影響している可能性が高い。
  • で、ようやく本題。まず一番の感想。尺が短くて詰め込みすぎな感じなのがつらい。グワダンでのエゥーゴ使節謁見から始まるが、ロザミア以外主要なところが削られていないせいで詰まりすぎて、基本的にテレビ版ダイジェストという印象。抜きどころ(エロいほうの意味じゃないよ)が少なくて、落ち着きづらかった。シーン切り替わりごとの時間の経過も分かりづらいし。ジェリドとアポリーくらい削ってもよかったんじゃないかという気がする。まあそこは色々と都合があるだろうしな。バウンドドッグを一応出すとか。
  • 新画は、コロニーレーザー内部なんかはなかなかかっこよかった。けど、カミーユvsハマーンのところなんかはどうせなら思い切って大幅に変えたものが見たかったので残念。まあそこは色々と都合があるだろうしな。予算とか時間とか。
  • 以前から話題になっていたラストだが、カミーユシロッコを倒して、ファがカミーユに呼びかけてからカミーユが反応するまでの一瞬は自分の中ではけっこう面白かった。ここが分岐点か!みたいな感じで。そしてカミーユが明るく返事をした瞬間、「今回はフラグが立ってたからセーフだ!」みたいな面白さがあった。ここだけテレビ版からパラレルワールドになりましたよ、的な。そういう意味で、映画『ラン・ローラ・ラン』を思い出した。ちなみにラン・ローラ・ラン』は、微妙に展開の違う三つのパラレルワールドが立て続けに流れて、最初の二つはバッドエンド、最後の一つがハッピーエンドで、そこで終わりなのだけど、そのときに感じた取って付けたようなハッピーエンド感が俺的には面白くて、今回のZガンダムでのラストの面白さも俺の中では同種のものだった。
  • そのラストシーンでモビルスーツから飛び出したカミーユとファが宇宙空間で絡み合うシーンは、わかりやすいくらいの肉感的な描写で、たぶん富野神御神託解読派のガノタからすれば観念にばかり囚われずに肉体的な繋がりを求めよみたいな御神託ということなんだろうけれど、それは俺からするとわりと普通のことだし、肉体的な繋がりはいいよね、うん、くらいのものでしかないので、むしろ、富野深読み派的解釈の、年を取ると生への執着から肉体を求めるようになるという読み方の方が個人的には面白かったりする。
  • あと面白どころとしては、放置されているモビルスーツをあえて攻撃しないところに言い訳セリフがつけ加えられていたところ。具体的には、サラとカミーユがどっかの隕石かなんかの中に入ってそこから出てモビルスーツに乗り込むところと、グワダン会談で混乱に乗じてシロッコがジャミトフを殺したあとそれぞれ脱出するところ。前者ではサラが「私は…壊せなかった、ガンダムを!」だかなんか言い、その直後にZに乗り込んだカミーユが「サラ、壊さないでくれたのか」だか言い、後者ではカミーユが「戦艦の中では…モビルスーツは攻撃できない!」だか言い、直後にシロッコが「ジ・Oは無事か。ならば私も百式を壊すわけにはいかんな」だか言う。セリフはかなり不正確だが、たぶんそんなニュアンス。何というか、その取って付けた感溢れる説明セリフが面白かった。そんな些細なツッコミどころ黙って知らんぷりすればいいのに、やっぱり気になったんだなあ。
  • カミーユvsシロッコでのセリフが「さかしいだけの子供が!」「かしこくて悪いか!」から「さかしくて悪いか!」になっていたところは非常に残念だったが、元々あれは監督の意図では「さかしく」と読ませるつもりだったらしいという話なので仕方ない。個人的には、こずるい、生意気というニュアンスのある「さかしい」をポジティブな意味合いの強い「かしこい」に切り替える言葉遊び的面白さがあって好きだったのだけれど。
  • 各キャラクターの中ではハマーン様が一番よかった。どこだったか忘れたけど、激昂のあまり声が裏返るところとかかっこよかった。「鳥肌が立っている……!!」の笑いシーンも健在でよかった。
  • 逆にシロッコは物足りなかった。俺の中でのテレビ版シロッコの一番の見せ場はサラが死んでカツにブチ切れて、サラオーラに止められても「サラが許しても、この私が許さん!」と叫ぶシーンで、それは、女を利用するキャラとして描かれているシロッコが、単に利用するだけではなく何らかの情らしきものを持っていることを伺わせて、シロッコの考えについて深読みを与えてくれるからなのだけど、そこのシーンも尺の都合かセリフが微妙に短くなって軽くなってしまい、シロッコはほんとにしょっぱいキャラになってしまった感じがした。
  • 先に削るべきと書いたジェリドは悲惨の一言。バウンドドッグのスカートの中を新画で見せるためにいたんじゃないかというくらいどうでもいい存在。ヤザンと違ってティターンズ内権力争いにも絡めていないからぽっかりと宙に浮いた立場だし、「カミーユ!貴様は俺の……!」も確かなかった。別の死に際セリフあったかもしれないが、記憶に残っていない。しかも死んだ直後にカミーユに「はしゃぎすぎるから」とか言われる始末。まあ、バウンドドッグでZの背中掴んで喜ぶくらいだったらその前にとっととビームで撃ち抜けよって話だけど。
  • ヤザンはやはりかっこいい。新画での表情はより悪人っぽさが出ていて、ヤザン好きとしては嬉しかった。ジャミトフが死んだことを知ったバスクに「よかったじゃねえか」と言いつつ、出撃して速攻「こっちにも都合があるんでね」とドゴス・ギアを落とすところはわりと好き。
  • カツはなかなかよかった。尺が短いせいもあってウザさはだいぶおとなしくなったが、シロッコを倒すと息巻いてサラを殺してしまってからそう時間も立たないうちにハマーンを倒すと言い出して、「何だこの電波は」みたいな面白みがあった。
  • あと他のキャラだと、サラの声がわりとよくて、「あれ、池脇千鶴だったよな、サラって。がんばってるじゃん」と思ったら島村なんとかって人だったとか、シャアの名言「まだだ、まだ終わらんよ」が微妙に変わっててちょっと残念だったとか、それくらい。
  • あとは百式が戦艦の爆発に巻き込まれた後どうなったかをちらりとでも見せて欲しかったか。放置モビルスーツを壊さない言い訳セリフつけるくらいだったらこのシーンこそ逆シャアへ繋がるシャア生存を匂わせる描写をつけて欲しかった。
  • エンディングで流れてたガクトのヘビーロックミクスチャーみたいな曲は、ラップの存在からオタクの人には抵抗が強かったかもしれないが、俺的にはけっこうよかった。というか、ガクトってこういう曲も作ってたんだ!という驚きがあった。やっさしいだけのことーばーならーの歌と合わせて、機会があればちゃんと聴きたい。
  • まあ、何だかんだで楽しかった。1800円の価値はゆうにあった。俺くらいのライトな準ガノタ的ポジションの人が一番楽しめる映画だったかもしれない。