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今日の夜の話。東中野駅で降り、エスカレーターに乗ろうとしたら車椅子の人がいた。年齢は大体30代後半から40代くらい。列に入るタイミングがちょうど同じくらいだったのでその人に順番を譲ると、エスカレーターの手前でその人はギャギャッと素早く車椅子を180度ターンさせて勢いよくエスカレーターに乗り、その次に俺も乗った。


一瞬、危なくないかなと思ったが、その人はエスカレーターに乗るなり上半身を大きく反らして身体を伸ばしていたので、ああ、これは慣れているんだなと思ったらまさにそのタイミングで「危ないと思った?」とちょっとおどけたような口調で話しかけてきた。「いえ、慣れているんだなと思いました」と答えて、それに対してその人が何と答えたかは忘れたけれど、とにかくその人の姿や表情は堂々としていて、それを見て、井上雄彦の『リアル』を思い出した。


その後、改札までのほんの数十秒の間、その人と話しながら歩いた。確かこちらが「これが日常ですもんね」と言ったときだっただろうか、その人がとても楽しそうに「そうだよ。自分の身は自分で守らなくちゃね」と、言ったのが強く印象に残っていて、まさに一期一会とは言え、そういう人と出会えたのが嬉しくて仕方なかった。こう言うのは変かもしれないけれど、世の中捨てたもんじゃないね。