武蔵坊弁慶

今年の大河ドラマ義経なわけだが、みなさんも日曜の夜はテレビの前でNHKを見ているのでしょうか。俺は見てません。
さて、義経に欠かせないお伴と言えば言わずと知れた武蔵坊弁慶。彼が義経に敗れるまでの間、道行く人を倒してはその武器を奪い取っていたという有名なエピソードがある。では、その奪い取っていた武器とは何だったのであろうか。
先日古本屋で入手した書籍「武蔵坊弁慶 驚愕の蒐集欲」に書いてあったその内容には、正直言って驚きを隠せなかった。ここにその一端を紹介する。
 

武器ファイルNo.14 円匙

円匙とはいわゆるシャベルのことである。当時、夜盗が円匙を使って落とし穴を作り、そこに人を落としては金品を略奪する行為が横行していた。弁慶もある夜にこの落とし穴にはまりそうになったものの、その巨大な体躯が幸いして穴に入りきらず夜盗を返り討ちにし、その際に夜盗の円匙を手に入れたとのことである。
 

武器ファイルNo.85 箪笥

ここで言う箪笥はもちろん現代にも伝わっているあの箪笥のことだ。箪笥の角に小指をぶつけるとどうしようもない痛みを覚えることは誰もが知っていることであるが、平安の昔からこの痛みは知られており、当時すでに無敵の存在として名を轟かせていた弁慶もさすがにこの痛みにはかなうまいと、弁慶の命を狙った刺客が夜道に箪笥を置いて、卑怯にも罠にかけようとした。しかし、知っての通り弁慶の泣きどころは脛であって、小指ではなかった。刺客は破れ、罠に仕掛けた高級桐箪笥、しかも一つだけ思ったらもう一個は、まとめて弁慶の物となってしまった。
 

武器ファイルNo.394 女装セット

平安時代と言えば百人一首からも知られる通り、恋多き時代である。武の道に生きる弁慶も女には弱いに違いないと踏んだある輩が、その身を女性へと変え弁慶に近づき、命を取る隙を狙ったという。しかしながら、この策略は失敗に終わった。それと言うのも、弁慶はこの輩と部屋で二人きりになった途端に「せ、拙僧、一度、あ、あれがやりたかったんだな。ほら、ぐるぐるぐるーってやつ」と言うなり帯に手をかけ、瞬く間に引っ張ってその衣装を剥ぎ取ってしまったからだと言う。お代官様ごっこも時には身を助けることを示した素晴らしい逸話ではなかろうか。なお、このセットには白粉とお歯黒がついているが、金のかんざしは別扱いとなっている。(武器ファイルNo.422参照)
 

武器ファイルNo.532 怪文書

もはや弁慶の名声はとどまるところを知らず、京の町では誰もが称えてその名を呼んでいた。それに目を付けた刺客の一人は、弁慶倒さんとするならばまずはその名からとばかりにありとあらゆる誹謗中傷を書き連ねた怪文書を作り、夜な夜な町中にばらまいた。一時はこれが功を奏して弁慶は宿も見つからぬ有様となってしまったが、苦心の思いで身の潔白を示す短歌を書き上げるとこれが人々の心を打ち、見事その身の潔白は示されたという。残念なことにその歌は現在では散逸してしまっている。
 

武器ファイルNo.657 ささやき戦術

正面からでは弁慶のその勇猛にかなわぬと、智謀に長けた一人の男が駆使した武器。刀を交えた一瞬の隙にその耳元で色々とあらぬことをささやいては弁慶を動揺させ、これにはさしもの弁慶も苦戦を強いられたという。しかしながらあと一歩というところで及ばず、男は無念にも敗れてしまった。最期の一言は「俺は…月見草…口数多いけど…」だったそうだ。
 
 
この他にも、濡れ手拭い、そろばん、似顔絵、嘘泣き、音痴、連鎖販売取引等々の興味深い武器が掲載されていたが、きりがないのでこのくらいにしておく。気になった人は古本屋で探してみるといいかもしれない。出版社はもちろん民明書房だ。